描くということ
絵を描くということは、
一切の浮力を捨てて海の中を漂うことに似ている
見えもしない海の底、もちろんどこまで続いているのかもわからない
光で照らしたところで底は見えないだろう
激しく引き摺り込まれるわけではないが、浮き上がることもない
ただ身を任せて下に下に潜っていく
つまり、絵を描くってそういうことだった
自分の描く曲線は、底に向かっていく軌跡なのであった
今は、さまざまなことから明確に抜け出したい、という気持ちがある
これまでとは逆向きの運動で、海の底から水面に向かって泳いでいかなければいけない
わかりきっている答えからみずからを放つということ
絵を描いたか描かなかったかに主軸を置いてその日一日を振り返るようになって久しい
描かなかった日は不安になる 焦燥感 うまく漂えなかったという絶望感
水面に向かって泳いでいるときは、
ペン先が引っかかるし手首もギクついてうまく動かない
描く行為の何と苦しいことか
おわり