メルヘンは死んだ
周期的に来るそれ
初めては、小学生の頃
教室の一番前の席で、先生の話を聞いていた
座って先生の顔を見上げていたはずなのに、まるで先生の大きさが縦向きの千円札と同じぐらいに感じられた
牛乳瓶を洗いに行った手洗い場が、まるでジャングルジムぐらいの高さに感じられた
もちろん、プリントを受け取りに行けば先生は標準的な大人の背の高さだと分かるし、
よじ登る必要なんかなく、蛇口に手を伸ばせば難なく手が届く
違和感を感じながらも、うまく説明することもできず、
そういうものなのかなと思っていた
非日常的だったけれど嫌な気分にはならなかった
成長するにつれ、周りのものが異常に小さく感じられることはなくなったけれど、
その逆は今でもある
時々、目の前のスマホの画面が30mぐらい先にあるように感じられたり、
パソコンの画面がロッククライミングの壁のごとくそびえ立っている気がすることがある
大学生のとき、ついにそれっぽいワードを入れてインターネットで検索したら、
不思議の国のアリス症候群(Alice in Wonderland syndrome)と出てきた
めっちゃメルヘンな名前やな、と思ったのを覚えている
それと同時に、私の中のメルヘンは死んだ
私の中のメルヘンは、誰かの言葉により説明できるものだったんだなあと
なんだか悲しく、寂しい気持ちになった
だからと言ってどういうこともないんですけどね
終わり